2026/09/01
先月から、ビジネス編では、
より読みやすく、
内容にスッと入っていただけるよう
入口に工夫をしております。
今月は、私自身が収益不動産市場を見る中で、
特に価格形成に違和感を覚えた5つの都市を擬人化し
自由な発想を交えながら、
「価格の歪み」をテーマにお届けします。
まずは、私が市場で感じた違和感を
ユーモアを交えて表現してみたいと思います。
🚄 🚄 🚄
最近、地方の収益不動産を見ていると
ときどき不思議な現象に遭遇します。
物件所在地:地方都市。
最寄り駅:地方都市。
入居者:地方都市。
市場規模:もちろん、地方都市。
ところが、
価格だけ東京方面へ。
・・・・・・。
いつ出発したんですか。
しかも、利回りを見ると、
「え?」
もう一度見る。
「え??」
パソコンを一度閉じる。
もう一度開く。
変わっていません。
どうやら最近の収益不動産市場では、
建物を地方に残したまま、
価格だけ先に新幹線に乗ることがあるようです。
某地方都市を出発。
大阪方面へ。
さらに、その先へ。
物件はそのまま。
価格だけ、どんどん先へ進んでいきます。
物件情報を見ながら、
「ここは地方都市のはず……。」
と住所を確認する。
間違いありません。
地方都市です。
しかし、利回りを見る。
……大阪が、すぐそこです。
買主さんも大変です。
「人気の地方都市ですから!」
「今後も期待できます!」
「なかなか物件が出ません!」
「表面利回り5%です!」
・・・・・・。
大阪と、ほとんど変わらない……。
(っていうか、そもそも東京・大阪の利回り自体、
だいぶ狂っているんじゃないかと……。)
ここで、融資を入れてみます。
金利。
上がりました。
修繕費。
上がりました。
建築費。
上がりました。
保険料。
上がりました。
では、利回りは?
下がりました。
・・・・・・。
あれ、そこだけ方向逆じゃないですか。
人気がある。
再開発が進んでいる。
企業が集まっている。
人口が増えている。
もちろん、それらは不動産価格を支える大切な要素です。
ただ――
地方都市、大阪に謎のライバル意識を燃やし始める。
さらに最近では、
価格だけが走り始めたのではなく、
どうやら一部の地方都市が、
大阪をライバル視し始めたようです。
大阪
「いや、別に勝負してへんけど。」
そこへ、地方都市Cがやってきました。
地方都市C
「地方都市だからって、家賃安いと思ってません?」
大阪
「まあ、一般的には――」
地方都市C
「結構取れますけど。」
大阪
「そうなん?」
地方都市C
「大阪さんに負けてませんよ。」
大阪
「……なんか、強いやつ来たな。」
地方都市C
「そして利回りも――」
大阪
「そこまで張り合わんでええ。」
続いて、地方都市D。
地方都市D
「ちょっと待ってください。」
大阪
「今度は誰。」
地方都市D
「一応、先に言っときますけど。」
大阪
「何を?」
地方都市D
「この辺一帯、だいたい私が牛耳ってます。」
大阪
「いきなり怖いな。」
地方都市D
「企業も集まってます。」
大阪
「うん。」
地方都市D
「人も集まってきます。」
大阪
「うん。」
地方都市D
「行政も経済も、この辺ではだいたい私のところに集まります。」
大阪
「まあ、中心なのは分かった。」
地方都市D
「周りの都市も、だいたい私を通してもらわないと。」
大阪
「何の許可制やねん。」
地方都市D
「この辺では、私が基準ですから。」
大阪
「誰が決めたん。」
地方都市D
「私です。」
大阪
「自分で決めたんかい。」
地方都市D
「ということで、価格も上げさせてもらっています。」
大阪
「価格まで牛耳るん。」
続いて、地方都市E。
地方都市E
「大阪さん。」
大阪
「はいはい。」
地方都市E
「うちも、結構いい街ですよ。」
大阪
「もちろん知ってる。」
地方都市E
「一定の需要もあります。」
大阪
「うん。」
地方都市E
「ただ、あんまり外からズカズカ来られるのは……。」
大阪
「急に人見知り出たな。」
地方都市E
「昔から地元の人たちで、ちゃんとやってますから。」
大阪
「市場まで人見知りなん?」
地方都市E
「地元には地元のやり方があります。」
大阪
「ガード固いな。」
地方都市E
「でも、物件価格は上げさせてもらっています。」
大阪
「そこだけ外の流れ取り入れるんかい。」
そこへ、地方都市Bがやってきました。
大阪
「……あんた、どこから来たん?」
地方都市B
「だいぶ北からです。」
「飛行機で来ました。」
大阪
「このために?」
「みんな新幹線で来とるで。」
地方都市B
「私は一旦、大阪まで飛んできました。」
大阪
「わざわざ?」
地方都市B
「ここから東京方面に乗ります。」
大阪
「大阪経由する必要あった?」
地方都市B
「あります。」
大阪
「何で?」
地方都市B
「大阪さんに追いつく会ですから。」
大阪
「そんな会、いつできたん。」
地方都市B
「私も、地方都市とはいっても結構大きいですよ。」
大阪
「知ってるよ。」
地方都市B
「地域では、圧倒的に中心です。」
大阪
「まあ、それはそうやな。」
地方都市B
「観光も強いです。」
大阪
「うん。」
地方都市B
「食べ物も、だいたい何食べても美味しいです。」
大阪
「急に強いカード出してきたな。」
地方都市B
「街も大きい。観光も強い。食べ物も美味しい。」
大阪
「分かった、住みたくなってきた。」
地方都市B
「ありがとうございます。」
大阪
「で?」
地方都市B
「利回りも、だいぶ大阪さんに近づいてきました。」
大阪
「最後の一個だけ全然うれしない。」
そして最後に、
少し様子の違う地方都市Aがやってきました。
地方都市A
「大阪さん。」
大阪
「はい。」
地方都市A
「ちょっと席、詰めてもらっていいですか。」
大阪
「え?」
地方都市A
「その551、膝の上に置いてもらって。」
大阪
「なんで私が豚まん膝に乗せなあかんの。」
地方都市A
「ちょっと隣、失礼します。」
大阪
「なんで、わざわざ隣に座るん?」
「ほか、なんぼでも席空いてるで。」
地方都市A
「ちゃんと理由ありますから。」
大阪
「聞こか。」
地方都市A
「家賃も取れます。」
大阪
「うん。」
地方都市A
「人口も増えています。」
大阪
「うん。」
地方都市A
「企業も来ています。」
大阪
「うん。」
地方都市A
「投資家からも人気です。」
大阪
「それはええことや。」
地方都市A
「再開発も進んでいます。」
大阪
「うん。」
地方都市A
「そして、利回りも大阪さんのところまで来ています。」
大阪
「そこは来んでええ。」
地方都市A
「だから、そろそろ大阪さんの隣かなと。」
大阪
「まあ……座りたかったら座ったらええよ。」
地方都市A
「ありがとうございます。」
大阪
「満足した?」
地方都市A
「いえ。」
大阪
「ん?」
地方都市A
「大阪さん。」
大阪
「何。」
地方都市A
「東京さんって、今日来てます?」
大阪
「……なんで?」
地方都市A
「次、そっち行こうかなと思って。」
――地方都市A、大阪を踏み台にして東京へ行こうとする。
気がつけば、
地方都市A。
地方都市B。
地方都市C。
地方都市D。
地方都市E。
5つの都市が大阪を囲んでいました。
大阪
「何なん、この集まり。」
地方都市B
「街の規模なら負けません。」
地方都市C
「家賃、かなり取れます。」
地方都市D
「この辺は私が仕切ってます。」
地方都市E
「外から来る人は、ちょっと様子見ます。」
地方都市A
「東京も視野に入っています。」
大阪
「一人だけもう次の相手探しとるやないか。」
そのとき――
向こうから、誰かが颯爽と歩いてきました。
東京
「ごきげんよう。」
5都市
「……!!」
5都市の目が、一斉にハートになりました。
地方都市A
「東京さん……!」
大阪
「急に全員、態度ちゃうやん。」
東京
「あら、大阪さん。」
大阪
「はい。」
東京
「こちらの方々は?」
大阪
「知らん。さっき来た。」
「なんか、全員謎にめっちゃ自信あるねん。」
地方都市A
「あの、東京さん!」
東京
「はい?」
地方都市A
「東京さんの隣、座っていいですか?」
東京
「あら、威勢がいいこと。」
大阪
「そこは譲らへんで。」
地方都市A
「え?」
大阪
「まず大阪の隣からや。」
地方都市A
「さっき座りました。」
大阪
「もう卒業したん?」
・・・・・・。
マウント合戦は、
ここで一旦終了です。
本来の実力値と、現在の価格の「歪み」
今回取り上げるのは、
いずれも地方都市の中では一定の規模を持ち、
地域の中核を担っている都市です。
人口や経済、賃貸需要などを見ても、
それぞれに市場を支えるだけの基盤があります。
しかし、
市場として安定していることと、
現在つけられている価格が適正であることは、
必ずしも同じではありません。
たとえ賃貸需要が強く、
流動性の高い都市であっても、
その期待が価格に織り込まれすぎれば、
収益不動産としてのバランスは崩れます。
今回は「どの地域が安全か」ではなく、
『その都市が持つ本来の実力に対して、
現在の価格と利回りはどこまで乖離しているのか。』
そこに焦点を当てます。
ただ、その前提として、
収益不動産を考えるうえで、
まず重要になるのが「エリアの選定」です。
人口や賃貸需要だけではなく、
金融環境、市場の流動性、将来の出口まで含めて、
その地域そのものを見極める必要があります。
2026年2月号では、
全国の収益不動産市場を
「金融・人口・市場構造・情報格差」
という4つの軸から横断的に比較し、
地域ごとの安定性や構造的リスクを整理しました。
【第11話 地域別市場リスク・動向分析 ― 2026年2月時点 実務ベース整理 】
しかし、適切なエリアを選定できたとしても、
それだけで十分というわけではありません。
次に重要になるのが、
その地域の実力に見合った「適正な価格」です。
「適切なエリア選定」と「適正な価格」。
この二つは、収益不動産を考えるうえで、
車の両輪のようなものだと私は考えています。
そして今回は、
「その地域の実力に見合った価格を見極める」
という視点から、市場を見ていきます。
現在のように全国の収益不動産仲介に
実務として携わるようになる前は、
東京・大阪を中心に法人向けの不動産を
扱う会社に勤務していました。
そこでは、信託銀行から入ってくる売却物件の情報と
金融機関の法人営業部の顧客の購入ニーズをつなぐ
仕事の一部に携わっておりました。
一棟RCマンションや商業ビルなど、
収益不動産の情報も継続的に入ってきましたが、
私の在籍期間中、実際に成約していったのは、
工場や本社の移転用地など
実需を伴う案件が中心でした。
一方で、収益不動産については、
東京23区内・大阪市内にある
築20年以内のRCの物件が中心で、
潤沢な売却情報と購入ニーズがありながらも
成約には至りませんでした。
この経験から、
東京・大阪の中心部の大きな市場であっても、
買主側の収益性に対する目線は厳しく、
市場で流通している価格や利回りと
実際に求められる水準には乖離があることを
思い知りました。
それ以来、
価格と収益性のバランスを重視するようになりました。
そして、地方都市の価格が上昇し、
利回りも東京・大阪に近い水準まで低下していることに
私はより強い違和感を覚えています。
もちろん、
地方都市だから価格が上がってはいけない
という意味ではありません。
人口が増えている都市もあれば、
企業進出が続いている地域もあります。
再開発やインバウンド需要などによって、
以前とは市場そのものが変わっている都市もあります。
ただ、それでも考えなければならないことがあります。
その価格を支えるだけの「地域の実力」が、
本当にそこまで高まっているのか。
東京や大阪には、
巨大な人口・経済規模、厚い賃貸需要、
企業集積、投資家層の厚み、
そして売買市場の流動性があります。
それらを実際に見てきたうえで
地方都市の市場を見ると、
「なぜ、この地域がここまで東京・大阪に近い水準になっているのだろう。」
と、立ち止まりたくなる場面があります。
もし最初からその地域だけを見ていれば、
「今はこの街が好調だから、これくらいの価格なのだろう。」
と受け入れてしまうかもしれません。
しかし、複数の市場を横断して見ることで、
その地域単体では見えにくい
「価格の歪み」が見えてきます。
そして今回、私が問題だと考えているのは、
単に「地方都市の価格が上がっている」
ということだけではありません。
では一体、誰が(何が)、
実力以上にこの価格を押し上げ、
市場をここまで歪めてしまったのか?
買主様の熱量でしょうか?
開発ラッシュでしょうか?
いいえ、それらは表面的な現象に過ぎません。
特に、今回取り上げる地方都市では、
実体経済とは完全に切り離された
「ある構造的な歪み」が存在します。
なぜ実力に見合わない高値でも取引が成立してしまうのか。
なぜ大阪並みの利回りで買えてしまうのか。
Kindle書籍では、この「市場を歪めている真犯人」の正体と
地方都市で起きている「二重の歪み」の構造について、
実務の現場目線から詳しく紐解いていきます。
私が大切にしているのは、
単純な表面利回りの高低ではありません。
人口、賃貸需要、家賃水準、地域経済、
融資環境、そして将来の売却可能性。
そうした要素を含めた、
その地域が本来持つ実力と現在の価格とのバランスです。
47都道府県を網羅的に比較したランキングではありません。
あくまで、私自身がこれまで調査し、
実際に市場に触れてきた中で、
地域の実力と現在の価格との整合性に
違和感を覚えた5つの市場を取り上げます。
そして、もう一つ。
今回取り上げる市場で、
もし私自身が実際に物件を仕入れ、
市場に出すとすれば、
現在の相場よりもおおむね2〜3ポイント程度高い
利回りが必要だと考えています。
【例:現在5%であれば、8%程度】
なお、弊社は物件を買い取って転売する
買取再販業者ではありません。
ここでいう「仕入れ」とは、
売主様から直接物件をお預かりし、
仲介物件として市場に出すことを指しています。
したがって、ここで示す利回りは
転売益を確保するための水準ではなく、
買主様への売却価格そのものを見据えた水準です。
私が見極めているのは、
実際の市場で売買取引として成立し得ることと、
購入後も買主様が無理なく経営を続けられること。
その双方を成り立たせる価格です。
私が2〜3ポイント程度高い利回りを求めるのは、
単に安全余白を大きく取りたいからではありません。
現在の利回りそのものが、
その地域や物件が本来持つリスクに対して
低すぎると見ているからです。
つまり、まず必要なのは、
現在の利回りをその地域の人口規模や賃貸需要、
家賃水準、流動性などに見合った水準へ戻すことです。
そのうえで、金利上昇や将来の修繕費、空室、
そして最終的な売却までを考えれば、
収益不動産として一定の余白も必要になります。
本来あるべき利回り水準へ戻すこと。
そして、
金利・修繕・出口まで見据えた余白を持つこと。
この二つは、分けて考える必要があります。
では、なぜそこまで利回りを補正する必要があるのか。
その理由を、実際の数字から見ていきます。
今回取り上げた
「地方都市A・B・C・D・E」とは、
一体どこの都市なのか。
そして、なぜ私が現在の価格と利回りに
強い違和感を持っているのか。
それぞれの市場が本来持つ実力と
現在の価格との「歪み」を一つずつ検証していきます。
実は、物件の家賃水準を地域ごとに比較するときに使われる
一つの指標があります。
この指標で各都市を見てみると、
表面上の家賃や利回りだけでは見えにくい
地域ごとの違いが浮かび上がってきます。
今回のKindle書籍では、
実際の数字を比較しながら、
この指標についてもご紹介します。
さらに今回は、
現在の家賃水準だけではなく、
築年数によって家賃水準がどのように変わるのか
という視点からも、5つの都市を比較します。
同じ条件を設定し、
築年数を20年から35年に変えたとき、
家賃水準はどこまで下落するのか。
比較してみると、
現在の家賃水準だけを見ていたときとは、
少し違う都市の姿が見えてきました。
「今、いくら家賃が取れるのか」だけでは見えない、
築年数が進んだときの賃貸市場の強さ。
その違いを、
実際のデータをもとに検証していきます。
そして、ここから見えてきた結果は、
都市の規模や知名度から想像するものとは
必ずしも一致しませんでした。
また、都市全体の価格や利回りだけではなく、
同じ市内でも、エリアによって金融機関の担保評価などに
差が生じることがあります。
今回は、そうした市内のエリア単位の
違いにも触れながら、
物件を見るうえで注意したいポイントまで
実務的な視点から掘り下げていきます。
金利上昇局面に入り、
これまで以上に物件の選定が重要になっています。
表面的な利回りや現在の家賃だけで
判断を見誤らないために。
今回の分析が、
これから収益不動産を選定するうえでの
一つの判断材料になればと思います。
ここから、
地方都市A〜Eの正体を明らかにしていきます。
👉 【Kindle書籍で本編を読む】
売却をご検討のオーナー様へ
長年にわたり大切に守ってこられた不動産や、
先代から受け継がれてきた一棟収益不動産について、
売却をご検討の際はご相談を承っております。
弊社では、単に現在の価格だけを見るのではなく、
その地域の賃貸需要や家賃水準、建物の状態、
金融機関の評価や次の買主様の融資まで含め、
売買取引として無理なく成立する価格を見極めることを
大切にしております。
そのため、残債等の関係で
市場で成立し得る価格との乖離が大きくなりやすい
投資家様、不動産業者様の所有物件は、
大変恐縮ですが対象外とさせていただいております。
弊社では、売買取引として成立することを前提に、
取扱物件を厳選しております。
👉 【売主様専用お問い合わせフォーム】